映画『ROMA/ローマ』感想
タイトル 『ROMA/ローマ』
点数 4.4/5.0
・Netflixオリジナル作品
・たんたんとした日常
・人は語らず、景色や物が語る
Netflixで『ROMA/ローマ』を見た。
Netflixを1か月以上使っているにも関わらず、いままで1つもNetflixオリジナルの作品を見ていなかった。
そこでいつもおすすめ作品に表示されていて、アカデミー賞も受賞したこの作品を見てみることにした。
全編モノクロであるこの映画では、家政婦をやっている主人公「クレオ」の日常がたんたんと描かれて、話が進んでいく。
最初や最後のクレジットのシーンでさえも、音楽もなしに情景がずっと映し出されている。
なんの前情報もなしに見始めたため、いつの時代でどこが舞台かもさっぱりわからなかった。
途中で子供部屋に1970年のメキシコワールドカップのポスターが貼ってあるのを見て、やっと分かったくらいだ。
だからと言って、面白くないわけではない。
描かれるのはクレオとその働き先の家族の日常。
日常はやはり普遍性を持っているらしく、たんたんと描かれるその中に自然と引き込まれてしまった。
この映画が「たんたんとした」と思えるのは、徹底的に人物による心理描写が省かれ、出来事のみが描かれているからだ。
人が語らない代わりに、背景や物が語ってくれる。
例えば、映画館でクレオが恋人のフェルミンに妊娠したことを告げるシーン。
トイレに行くといってフェルミンが出ていった後に、映画のスクリーンには落下する飛行機が映し出される。
望まない妊娠で沈んでいくクレオの心の内が暗示されているのだろう。
このような描写が幾度も繰り返され、作品の深みを増していく。
そしてこの映画最大の山場である浜辺のシーン。
死産をしてしまったクレオと、父親が去ってしまった家族。
波打ち際から離れ、おぼれていしまいそうになっている子供2人を、クレオは泳げもしないのに助けに行く。
そして無事助かった後、クレオは子供が生まれてくることを望んでいなかったことを打ち明ける。
子どもが生まれてほしくないと思っている中、死産をしてしまい苦しんでいたクレオは、海から子供2人を救うことで、自分自身の罪悪感からも救われたのだった。
「母なる海」から子供を救うというのが大変印象深い。
いままで、直接表にでてこなかったクレオの心の内が、ここで初めて描かれ、見ている我々に強く投げかけられる。
そして、互いに抱き合う姿には感動せざるを得なかった。
全体を通してとても素晴らしい作品だった。
ただ、正直言って日本人の私では、メキシコの細かい部分まで分からない。
ネットで調べなければ、タイトルさえ意味が分からなかったのだから。
それでも面白い作品ではあるけれども、もし分かれば、もっと自分の中での評価も高くなっただろう。
この映画は表現の仕方も特別だが、映画自体もNetflixでの配信が中心とやり方が特別だ。
既存の「映画」というものを変えてしまいそうなやり方だが、これからはこれが主流となっていくのだろうか。
私自身、映画の多くを映画館ではなく配信で見ていることからも、当然なのかもしれない。