映画『ムーンライト』感想
タイトル 『ムーンライト』
点数 3.9/5.0
・「ネガティブ」要素てんこ盛り
・「ネガティブ」が日常
・新しい表現、演出
Netflixで映画『ムーンライト』を見た。
この映画は2017年にゴールデングローブ賞やアカデミー賞を受賞した作品だ。
当時、黒人を扱ったこの作品が受賞したことが、ニュースでも大きく取り上げられたことを覚えている。(それよりもラ・ラ・ランドと間違えられたことの方が大きく取り上げられたかも。)
前々から見ようと思っていたが、なんとなく今まで見ていなかった。
今年、アカデミー賞で作品賞を受賞した『グリーンブック』(未視聴)も黒人問題を扱った作品であるし、この機会に見てみようかなと思って見た。
『ムーンライト』を見ていてまず思ったことは、黒人やゲイ、ドラッグ、貧困などといった「ネガティブ」な要素が満載であること。
どれか一つとったとしても、物語で扱うのに十分な重さがある要素だ。
正直言って最初はあまり内容が伝わってこなかった。
先ほど述べたネガティブな要素が次々と出てきて、この作品がどういった話なのかつかめなかった。
ただ、苦しんでいる主人公の姿を見ているだけだった。
しかし、3部構成になっている2部の途中であることに気付くと分かるようになった。
多数出てくるネガティブな要素はすべて主人公の日常だったのだ。
黒人は多数出てくるけれども、黒人差別を取り扱っているわけではない。
劣悪な環境こそが、彼らの日常なのだ。
それに気付くと、その中で苦しんでいる主人公の苦しみや悲しみが強く伝わってくるようになった。
そして3部でこれまで主人公の抱えていた苦しみが解放されていく。
1部や2部を通すことで、私にとっての非日常である主人公たちの日常を感じられるようになってる。
たからこそ、この3部で主人公たちが感じている救いを私も感じられるのだろう。
見ていて印象に残ったのは、音や色といった演出。
特に音は、人物がしゃべっているときの口の動きと聞こえてくる声が違っていたりして、登場人物の心情がより伝わりやすい新しい演出だと感じた。
この作品は、黒人差別のような問題を扱っていると思って見始めたし、途中までもそう思っていた。
しかし、実際は全然違っていた。
「黒人を扱った」映画ではなく、「黒人による」映画なのだ。
ただ、一般的な私たちにはわかりにくい世界の話ではあったかもしれない。
偏見を持たずに、こういった作品を見なければと思う。