映画『遊星からの物体X 』感想
タイトル 『遊星からの物体X 』
点数 4.2/5.0
・広大な雪原が浮きだたせる孤立
・まじまじと見せつけられる謎の「物体」
・思っていたよりも高度な戦い
映画『遊星からの物体X 』を見た。
この作品も前々から見ようと思っては3年間くらいマイリストに眠っていた作品だ。
この作品のように、孤立した人間たちがモンスターに襲われるという作品は多い。
似た作品では、『エイリアン』が真っ先に思いつく。
あちらは宇宙で、こちらは南極。
どちらも広大な世界が、登場人物たちの孤立をより強く印象付ける。
そんなことを考えたのはヘリコプターで登場人物たちがノルウェーの基地に向かうシーン。
後ろに広大な雪原が広がる中をヘリコプターが飛んでいく。
そんな何もない世界が登場人物たちの孤独をより強く感じさせ、これから訪れる恐怖を浮きだたせていた。
登場人物たちをつぎつぎと襲う謎の「物体」。
出てくる場面ではそのグロテスクな姿がまじまじと映し出される。
確かにグロテスクであまり見ていたいとは思わないのだが、でもあまり怖いとは感じなかった。
当時はともかく、今ではありふれたデザインでさんざん似たような姿のモンスターを見てきたからだろうか。
「グロテスクさ」と「恐怖」は別物なのだななんてことも思った。
ただ、腹が口の形にガバッと開くシーンは怖かったな。
そんな謎の「物体」に対して、登場人物たちは思っていた以上にしっかり対処していく。
基地にいる人たちはおっさんばかりで、全然違う作品だけれども『南極料理人』を思い出した。
しかし、そんな人たちも「物体」が生物に同化できると分かると互いに疑心暗鬼になっていく。
私がこの作品で一番恐怖を感じたのはこの「同化」できるという設定。
姿かたちどころか、会話も普通にできて簡単には区別できない。
この設定により、こういった作品にあるモンスターに襲われるという単純な恐怖だけではなく、隣にいる人間も信用できないというより強い心理面での恐怖を生み出している。
そのため、たとえ「物体」が画面に映し出されていなくても、常に緊張感が漂っていて見ていて大変面白かった。
巨大な「物体」や盛大な爆発シーンを経て、基地は燃え上がり、最後に2人だけが生き残る。
そして、この2人が互いに声を掛け合うところでこの作品は終わる。
最後の2人のどちらがが実は「物体」なのだ、とか言われているらしいが、個人的には2人とも人間であってほしい。
どちらにせよ、ここで彼らは終わりなのだから。
原作は昔の小説で、この映画自体もかなり昔に作られている。
だからこそ、単純に恐ろしい映像を映し出すだけでなく、推理的要素も含んだストーリーになっているのだろう。
単純な恐怖だけではなく、もっと深い恐怖。
こういう作品は見ていて面白いな。
そういえば、なぜ南極の観測基地に火炎放射器とかがあったのだろうか。