映画『メッセージ』感想
タイトル 『メッセージ』
点数 3.9/5.0
・「ファーストコンタクト」もの
・主人公の視点で進んでいく
・未来が分かっていて、それでも進んでいくという新たな視点
映画『メッセージ』を見た。
内容は『未知との遭遇』のような、いわゆる「ファーストコンタクト」もの。
言語学者である主人公「ルイーズ・バンクス」は、突如地球に現れた宇宙人(ヘプタポッド)との意思疎通を行うことを任される。
見ていてやっぱり衝撃的だったのは娘との思い出のシーン。
映画の最初もこのシーンから始まり、劇中たびたび突然に挟まれる。
内容から、死んでしまった娘との思い出なのだろうと分かるのだが、なぜこういったシーンが挟まれるのかは分からない。
そして後半になると、過去の回想であろうシーンと現在のシーンがリンクしていき、見ていて違和感を感じ始める。
実は過去の思い出だと思っていたシーンは、未来の出来事だったのだ、というのがこの映画のどんでん返しの部分。
言語がその言語を話す人の認識に深くかかわっているという「ソシュールの言語理論」なるものがこの映画のテーマの1つであり、宇宙人(ヘプタポッド)の言語を理解するうちに彼らと同じように未来が見えるようになった(時間に対する認識が変化した)というのだ。
この力を使ってルイーズは混乱する事態を収束させ、宇宙人(ヘプタポッド)との間で起ころうとしていた戦争を回避する。
過去や現在で行動することによって、未来を変えるというのはSFではよくある話だ。
これまでのSFでは、過去や現在の行動で未来を変えるといった単純なものから、少し踏み込んだものでは、過去や現在を変えたことで生まれる「タイムパラドックス」に抗うという話が描かれてきた。
しかし、この「メッセージ」は違う。
未来は完全な決定事項として扱われている。
最後主人公は、これから生まれる自分の娘が難病で死ぬことを知っていても、パートナーと結婚することを選ぶ。
未来が分かっていて、しかも不幸なことが起こると分かっていても、その道を進んでいくというのは新しい視点だと思った。
そこで重要になってくるのが、「瞬間の幸せ」というもの。
たとえ、離婚や娘の死が待っていようとも、そこまでの一瞬一瞬の幸せな過程を大切にして生きていくということが描かれている。
この「瞬間の幸せ」というのは現実の我々にも必要なことではないのだろうか。
たとえ未来は見えなくとも、現代ではいわゆる「レール」というものができてしまっていて、ある程度どんな道を生きるかが決まっている。
どんな道を選ぶかや、誰も進んだことのない道を選ぶといった自由はあるかもしれないが、それでも閉塞感を感じるときがある。
年齢を重ねていったり、大病を患ったりすれば、ますます生き方というのは狭まっていくだろう。
ただ、そんな中でも「瞬間の幸せ」を意識しながら生きていくのが、1つ重要なことではないだろうか。
一つ気になったのが、ルイーズが宇宙人とのやり取りを任されるのが決まったシーン。
最初軍人が来たときは、直接宇宙人とやり取りをしないと分からないと主張するルイーズは相手にされず、軍人は次の候補の学者のところに行ってしまう。
そのとき、ルイーズが「サンスクリット語の戦争の語源を聞いてみて」と言葉を残す。
その夜、もう一度軍人がルイーズのもとにやってきて質問の答えを聞き、納得して宇宙船のところに連れていかれる。
好意的に解釈すれば、ルイーズの回答が優れていて彼女の優秀さを表現したいとか、他の学者には皆断られてしまったとかを表現したいのだろうと思うが、少しわかりにくい。
その後の、ヘリコプターのシーンや、初めて巨大な黒いピーナッツの半分のような宇宙船が出てくるシーンが良いだけに、少しもったいない気がした。
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