映画『動物農場』感想
タイトル 『動物農場』
点数 3.5/5.0
・昔のディズニー映画のようなアニメーション
・原作より善悪はっきりとした話
・どうしてもラストには納得できない
ここ数日で、ジョージ・オーウェルの『動物農場』、『1984年』について感想を書いた。
『動物農場』については1954年に作られたアニメーション映画がある。
すでにパブリックドメインになっているかどうかは分からなかったが、1954年の映画ということで、YouTubeなどの動画サイトで原作すると本編が丸ごとアップロードされているものがいくつかあった。
もちろん日本語訳はないが、そこまで難しいセリフもないし、聞き取れない部分もYouTubeの字幕機能で字幕を出せば大体理解できるだろう。
映像は昔のディズニー映画のような感じ。
もちろん昔のアニメーションという感じなのだが、見ていて安っぽさや出来の悪さは感じない。
やはり実際に動いている姿を見ると、動物たちのキャラクターが絵からよく読み取れて分かりやすい。
鳴き声も動物たちの感情をつかみやすい。
基本的に話は原作に準拠して進んでいくが、いくら原作が短いといっても70分程度ですべてを描くことはできないため、省略や細かな改変が加えられて進んでいく。
良いと思ったところは、雄豚の「メージャー爺さん」が出てくるあたりや、雄豚の「ナポレオン」が子犬たちを手に入れるあたり。
原作を読んでいると、それぞれの出来事が淡々と進んでいくだけであったが、話のつながりが分かりやすく整理されていた。
ただ気になったのが、日曜朝の集会があまり描かれていなかったこと。
動物たちは日曜日の午前中に集会をし、そこで多数決で農場運営の方針を決める。(もちろん提案するのは賢い豚たちだけなのだが。)
この部分は建前的には民主制が行われていることを示し、さらに集会の最後にメージャー爺さんから教えてもらった歌を何度も歌うところは、原作を読んでいて好きだったところだったので、そこがあまり描かれていないことは少し残念に思えた。
そして、やはり気になるのがラストシーン。
原作では豚たちによる独裁がつづき、特に救いもなく終わるのだが、映画では動物たちが豚に反乱を起こして終わる。
その中心にいるのが、原作を読んでいて私が共感していたロバの「ベンジャミン」。
映画では、原作の厭世家のような姿ではなく、馬の「ボクサー」とともによく働く存在として描かれている。
そんな彼が、ボクサーの死を前にして、多くの人が期待していたように反乱を起こすことは当然のように思える。
しかし、私が共感したのはそのような状況に置かれても行動を起こさなかったからであり、どうしても違和感を感じてしまった。
もう一つ気になったのは、雄豚の「スノーボール」。
最初に動物たちの主導者として奮闘するのだが、権力を握りたいナポレオンによって追い出されてしまう。
原作でも映画においても、追い出された後、再び出てくることもなく、その後の詳細は不明のまま終わる。
この「スノーボール」というキャラクターに重ねられているのはトロツキーであり、トロツキー自身亡命先で暗殺されていることを考えると、読んでいてそう不自然には思えなかった。
しかし、映画では別の農場からも来たであろう多くの動物たちが、反乱を起こして終わる。
もちろんそこにスノーボールの姿はないが、他の農場の動物たちにも自分たちが農場から人間を追い出したことを広めていたスノーボールの姿を知っている以上、最後の反乱にも関係しているのではないかと思ってしまう。
邪推かもしれないが、ベンジャミンの行動など都合よく描かれているためそう思わざるを得ない。
また、そう考えると最後のシーンも違った意味に見えていくのではないか。
映画は政治的意図で原作とは変わっていたようだけれど、それがまた新たな視点を生んでいるように思えた。
- 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
- 発売日: 2009/06/10
- メディア: DVD